2005年05月25日

☆葵の物語☆〜麻雀荘開店記B

翌日は少し憂欝だった。

お店をやろう!

って決めてはいたけれど、オーナーにどう切り出せばよいのか、切り出したらどんなリアクションをされるのか不安だった。
オーナーが辞めるといったお店。
でも本音は辞めたくないであろうお店。

それを私が売ってくださいというのも、少し気が引けた。

『一緒にたてなおしましょう!』

もしも私がそう言ったなら、資金面でも少しは楽になるし、オーナーはまだ続けるだろうなと思った。

だから、少しの同情もあった。

でも無理だよね。
ファンタジアは土台から建て直さないと、もう立ち上がれない。
たとえ今のオーナーに私が協力しようとも、現状とかわらない。
傷口を広げるだけ。

それに、一緒に何かをやるには絶対の信頼関係が必要!
お金のこともからんでくるからね。

やっぱり葵は、夏奈とじゃなきゃだめ。

ちゃんと言おう。
ちゃんと言わなきゃ。
そうしないとファンタジアがなくなっちゃう。

とにかくバイトにいかなきゃ。

このままいけば、残りA週間になるであろうファンタジアのアルバイトに私は向かった。

 その日は常連さんがひとり遊びに来た。
この日の従業員はオーナーと私だけ。もちろん卓はたたない。

それでも、仲良しの常連さんだったから、B人でお話をしたりして、その日の営業は終わった。

オーナーに話す時間なかったな…。

帰り際、どうしようかと思っていた私の気持ちを察したのか、オーナーが「食事にいこう」と誘ってくれた。

 少し茹ですぎのお蕎麦を食べながら、私は話を切り出した…。

「あの、ファンタジアを私にやらせてください!」

「え?」

「辞めてしまうなら、私がやります。経営権を私に売ってください。」

「…ひとりでやるの?」

「いえ。夏奈知ってますよね?前に何度かお店に遊びにきた、私の友達の。」

「ふたりで?」

「はい。ふたりでなら、必ずファンタジアを建て直せると思うんです。」

「大丈夫なの?夏奈ちゃんも、お金も、親御さんとかも色々…。」

「はい。夏奈とは昨日話し合いました。お金もふたりならなんとか…。お店は値段にもよりますが、必ず払います。親は…たぶん平気です!私、昨日も言ったけれど、ファンタジアが好きで、なくなったらさみしいの。だから…。」

しばらくの沈黙のあと、オーナーが口を開いた。
それは思わぬ言葉だった。

「ありがとう。」

えっ?お礼??

続けてオーナーは言った。
「僕にとっても、ファンタジアは大事な場所だよ。ずっとやって来たからね。たくさんの思い出がある。その場所がなくなるのはとても淋しいと思っていたんだ。売るにしても、全くの他人の手に渡るのも淋しい。高橋さんがやってくれたら嬉しいよ。遊びに行きやすいしね。」

私は泣きそうになった。あぁ。思い切って言ってよかった。夏奈とふたり、ファンタジアを守っていこう…。

そば屋を出て、お互いの車に乗りこむ時、

「あらためて、夏奈も一緒にお話に行きます!」

ドアを半分開けてオーナーに言った。


はやく夏奈に連絡したい!
私はエンジンをかけて、ムーブのアクセルをグイッと踏み込んだ。


葵の物語…Cへ続く
posted by 葵&夏奈 at 19:53| 埼玉 ☀| 麻雀荘開店記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。